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理想のSP 最終回 石田式BHBSの謎

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理想のSP箱 最終回 石田式BHBSの謎

前回で一応の決着を見たのですが、
とあるスピーカーシステムに似ていることに気付きます。
そう、石田式BHBSです。
バックロードホーンの開口部を閉鎖してバスレフダクトを取り付けた方式です。

石田式BHBSの動作は謎が多い。
バックロード開口部は閉鎖しているため、
理屈の上ではバスレフ型に見えます。

バスレフの内部にバックロード構造を入れても、
バスレフ計算式に影響を与えるパラメータに変化はありません。

しかし実際は閉じられた空間内にホーン構造を取り入れただけで、
驚くほどの効果が出ていました。
しかも、ダクト感度がいい意味で鈍感です。
実に不思議です。

バックロードの低音ダンピングを向上させるための方式だと捉えると、
あそこまで緻密なホーン構造を作らなければいけないことが理解しにくい。
しかも、他の方々の作例との比較で、
ホーン部設計のスイートスポットは確実に狭い。

ここで、「バスレフ型の等価回路」での結論を思い出すと…(以下、引用)
——————————
ユニットに変更がない前提でいくと、
ダクト{ポート}の効果はエンクロージャー{キャビネット}容積に左右されて、
ユニットサイズ、エンクロージャー容積共に変化がないなら、
その内部構造に影響されるってこと。
(ここ試験に出ます)
———————————

このホーン構造を背面放射抵抗の低減のための造作と捉えれば、
スイートスポットの狭さもダクト感度低下もある程度説明がつきます。
バスレフ等価式の話で触れたように、
内部スティフネスが低下すると、
ダクト内部の空気質量と機械抵抗の総和への影響が低下するからです。

かと言って内部スティフネスがゼロだと、
ダクトを全く駆動できないので、
適切な値にしなければならないことが重要です。
これがスイートスポットの狭さの理由ではないかと考えられます。

また、長岡バックロード計算式から導き出せるバックキャビィ容積と比較して
石田式BHBSの容量が小さいように思えるのも
この理屈の確かさを後押ししているように思います。
背面放射抵抗を減らす理論上のホーンにバックキャビィは必要ありませんから。

この推論が成り立つには、
密閉型の内部にホーン構造を作った方が内部スティフネスの総和が低下するという前提になります。
ホーンを作ると確かに放射抵抗は減りますが、
雑に作るとかえって増えるようにも思えて、
本当に内部構造の変更によってこれほどの効果が出るものなのでしょうか?
やはり謎は深い。

等価回路から考えた理想のスピーカーは
バックロードホーンスピーカーのホーンの音を減衰させたスピーカーとなりました。

これはいつかやってみたい。
(美しく話がまとまったな!)



と、そこまで言及しておいて何ですが、
ホーンと密閉型の等価回路に関わる近似性を語るなら、
単なる密閉型が一番シンプルと言えます。
なぜなら、スピーカー前面の室内も密閉だからです。
一周回って、結局、同じ話になってしまいます。

前後空間の違いは容積のみです。
しかし、圧倒的に値が違いすぎます。

そこで、キャビネットをアコースティックエアサスペンションにして…

本当に話がループしてますが、
超大型密閉でこの値差を小さくするという考えもアリです。

そこでJIS箱ですよ。

チャンチャン、終わり






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理想のSP5 これでいいのか?

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理想のSP箱5 これが帰着点か?

等価回路の比較では、
ユニットの片面が密閉型、
その背面がホーン型にすると前後空間のバランスが比較的よろしい。

そして密閉型の空間を大きくし、
その内部をリスニングルームにすると、
そのスピーカーシステムは内部から見るとバックロードホーンにそっくりになります。

しかし、このバックロードホーンの開口部は隣の部屋に開放されています。

さて、ここからが今日の「本題」になります。

ユニットの対称性を重視し、
密閉型とバックロードホーンを前後に配置すると、
このようにホーンの低音は活用できなくなります。

通常のバックロード型は対称性がない代わりに、
背面のホーン部がフロント側の密閉型空間に入り込んで低音を増強しています。

この状態はわざわざ無限大平面バッフルに穴を開けて、
振動板の動きを乱しているとも言えます。

対称性を優先すると、
ホーンを通過した音圧をリスニングポイントに導くことはできません。

現実にはどうでしょう。
対称性仮想システムのように、
本当にホーン音圧を隣室に出せればいいのですが、
実際は不可能ではないでしょうか?
もしそれが可能なら、
部屋と部屋の隔壁にユニットを直付した方がよっぽどシンプルです。

ホーンを通過した音をそのまま空間に放射してはいけない、となると
その放射音は減衰させなければなりません。
低音増強は諦めることになります。

減衰のためのシステムは、
音響迷路、
逆ホーン、
密閉、
が考えられます。
ただし、密閉で減衰させる場合は
内壁面からの反射を防ぐために、
十分大きな容積か、分厚い吸音材が必須となるでしょう。

このスピーカーを別の見方をすれば、
密閉型あるいは音響迷路の内部にエクスポネンシャルホーンを内在させたものとも言えます。

ここで、等価回路を用いた
「理想のスピーカー」は一応の帰着点をみました。


でも、まだつづく
次回、怒涛の展開


理想のSP4

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理想のSP箱4 密閉型とホーン型の近似性

等価回路のつづきです。
バスレフ型は一旦脇に置いておきます。

等価回路同士ですごく似ているのが、
驚いたことにホーン型と密閉型なんです。
実物の見た目も構造も全然違うこれらの方式が等価回路ではそっくり。

密閉型の等価回路のエンクロージャー内部スティフネスをゼロにすると全く同じ回路になります。
つまり、理想的なエクスポネンシャルホーンと大容積の密閉型は
パラメータ変更に対して極めて近い動作をすると言えそうです。

ならば、
ホーン型と密閉型をユニットの前後に置けば
ユニットの対称性を維持できます。

さて、しつこく思考を進めます。

ではユニットの片面をホーン型、
もう片面を密閉型とします。
どちらを前面に据えますか?

フツーに考えれば音が出て来るのはホーンの方だからそちらが前面になります。
ところが、フロントにホーンを作ると再生帯域が狭くなるという問題が発生します。
帯域を確保しようとするとショートホーンかハイパボリックホーンになってしまい、
Hi-Fi再生が難しい。

このようにホーン側をフロントに据えるのは
問題があります。
かと言って密閉側を前面にしても音は出てきません。

が、もし密閉型の容積がとてつもなく大きかったら?
そしてその内部に人が入れる程だったら?
リスニングルームを巨大な密閉箱と見立てられないでしょうか?

こう思考を進めていくと、室内空間の
Sc:エンクロージャー内部スティフネス
は実質ゼロに置き換えられるので、
本当にホーン型との対称性が確保できます。
(とりあえず放射抵抗は無視します)

その状態で、
密閉型の内部にいる人からそのスピーカーを見ると、
ホーンが隣の部屋に繋がっているバックロードホーンスピーカーに見えるはずです。

そういう意味では、
バックロードホーンシステムはユニット前後空間のバランスが良いと言えます。
しかし、難点もあります。

実は拙作「バスレフバックロード」を設計している時にコレに気付きました。

つづく

理想のSP3 バスレフ型の等価式

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理想のSP箱3 バスレフ型の等価回路

フロントとバックにホーンを使ってユニット前後の対称性を確保するというのは、
フロントホーンがちゃんと機能する前提の話でした。
しかし、小型フルレンジ一発でのシステムだと、
ホーンを通過できる音域は確実に狭くなります。

というのが、前回までのお話。

さて、ここからが本題です。

スピーカーの大まかな構造を考える時に、
「等価回路」を参考にしています。
「等価回路」とは、
物理的,機械的な特性を電気回路に置き換えて周波数特性を考える回路と解釈してます。

電気回路に置き換えられる素子は
「抵抗」「コンデンサー」「コイル」の3種類。
例えば、
ユニット支持体の機械的抵抗は周波数に関係なく出力低下に影響するのでこのパラメータは「抵抗」に置き換えられます。
振動板質量m0は大きいほど高周波が抑えられるので「コイル」
エンクロージャー内の空気抵抗は大きいほど低音が抑制されるので「コンデンサー」

こんな具合にさまざまな機械抵抗のパラメータを電子素子に置き換えると、
パラメータ変更による出力特性が予測しやすくなります。

この等価回路は不思議なことに
単純なエンクロージャーが単純な等価回路になるとは限りません。
例えば側板のある後面開放式なんかは、側板の放射抵抗なんてものも加味されて、
他にはないような超複雑な回路になったりしてます。

そして、やや複雑な回路図なのがバスレフ型です。

多くのスピーカーシステムの等価回路がシリーズ接続だけで構成されているのに対して、
バスレフ型の等価回路は内部にパラレル回路があります。
これは排他的要素があるパラメータ群があることを示しています。

バスレフ型の等価回路は
キャビネット内部スティフネスが、
パラレル接続のコンデンサーのに置きえられています。
パラレル接続の他のパラメータはダクト内空気質量とダクトの空気機械抵抗といったダクト内部の空気質量と機械抵抗の総和。
キャビネット内部スティフネスは振動板半径の4乗に比例し、
キャビネット内容積に反比例します。

この回路から読み取れることは、
振動板半径を大きくして、キャビネット内容積を小さくすれば、
ダクトの機械抵抗は無視できるほど強力に駆動できるってこと。
ユニットサイズの変更は4乗で効くので箱サイズ変更より変化が出やすい。

逆に、小さいユニットで箱が大きいバスレフ型はダクト内空気の機械抵抗がバカにならないってことになります。
また、ダクト内空気質量の制動力にも制限がかかります。
こうした場合はダクトサイズや形状に注意が必要になることが分かります。

ユニットに変更がない前提でいくと、
ダクト{ポート}の効果はエンクロージャー{キャビネット}容積に左右されて、
ユニットサイズ、エンクロージャー容積共に変化がないなら、
その内部構造に影響されるってこと。
(ここ試験に出ます)


つづく

理想のSP2 ダブルのホーン

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理想のSP箱2

アコースティックエアサスペンションで
疑似的な無限大平面バッフルを構築しようとしてしくじった、
というのが前回のお話。

ユニットの表裏を同じような2Π空間にできないなら、
とりあえず、前後を同じ方式にすれば対称性は維持されるよね。
という考えに変更です。

当たり前のことですが、
一般的なスピーカーでは、
ユニットの前後空間は環境が違いすぎます。
コイツを何とかしたい。

そこでホーンスピーカーですよ。
リアはバックロードホーン、
フロントはショートホーンを組み合わせれば、
とりあえず前後共にホーン構成となります。
これなら相性が悪いとは言わせない。

で、作ったのが、
「ツインホーン」
これは大型のスパイラルホーンに
ハイパボリックホーンを組み合わせたものでした。

スパイラルホーンは本当にホーン動作しているのか?
という疑問は横に置いておきます。

コイツはホーンの出来より、
内容積が少なくて低音再生にそもそもムリがありました。
その後、ユニット変えたり、物理イコライザーつけたりと手を加えましたが、
根本的な解決には至りませんでした。

しかも、無垢の木材削り出しという、
ガッツが不足している状態では到底できないフロントホーンも
たた、クセが出ただけのような気もします。
労作と言えば労作だったけど。

近作の「乙Z」もコンビネーションホーンです。
リア:エクスポネンシャルCWホーン
フロント:ハイパボリックホーン

リアのバックロード設計は悪くなかったと思いますが、
中音漏れと低音ダンピングに悩む作品でした。
フロントホーンによるクセが出なかったのは、
ホーンとしてあまり機能してなかったからかもしれません。
素性は悪くないので、もう少し手を加える計画でおります。

前後をホーンってのは、再生帯域の確保から
フロントをショートホーンにしなければいけなくなります。
必然的にフロントはハイパボリックホーン一択。

そうすると、実にバランス悪いf特になる可能性があります。
あるいは特定の帯域のレンポンスだけがいい、とか。
コレってジャジャ馬になっているだけとも言えます。
実際、「ツインホーン」では、ノッチ回路の出番となりました。

結論
フルレンジの場合、
フロントホーンってなくてもいいじゃん。
バックロードホーンだけでいいじゃん。

つづく
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